2人の大統領、2つに割れた国、ベネズエラ
このほどNPO難民支援協会から連絡を受けて、難民認定されたベネズエラ出身の青年の帰化などについて相談に乗りました。来年に就労期間3年を含めて在留5年になり、日本語もN1を取得しているので、大きな問題はなさそうです。
しかし、彼が難民申請してからほぼ1年で認定が降りたことに多少の驚きを感じたので、詳しく尋ねてみたところ、さらに驚きました。というよりも、自分の無知を恥じたのでした・・・
長らく反米社会主義政権が続いたベネズエラでは、7年程前から政治的迫害などを理由に、アメリカ合衆国へ亡命したベネズエラ人は15,000人を超えているのですが、そこに物価が17,000倍にも達する経済危機で、2018年11月までに国外へ逃れたベネズエラ難民は、人口の1割に当たる300万人を超えたのでした。まず、そのことを知りませんでした。難民の行き先の大半は南北アメリカが占めていますが、日本に難民申請する人が数十人にいたとしても、ちっとも不思議ではありませんね。
私が心底驚いたのは、彼の難民申請の理由となった「政治的迫害」の中身でした。てっきり反米左翼政権に対する反体制活動が原因だと思ったのです。
事実は、全くの逆でした。彼の父親は実は「親政権」の著名な方であるため、家族が「反政権」グループから命を狙われるような脅迫を受けていたのでした。どういうことでしょう?
青年がベネズエラを飛び出して日本に「逃げてきた」2018年から2019年時点の話ですが、実はベネズエラには、昔の日本の南北朝のように、大統領が2人誕生したのです。反米社会主義政権を継承し、中国やロシアが支持するマドゥロ大統領と、大統領選挙の無効を主張しアメリカなど西側諸国の後押しで暫定大統領への就任を宣言した、グアイド国民議会議長の2人です。2022年6月の現時点でも、互いに正統性を争っている状況です。
国家として瓦解している状態だと言わざるを得ませんね・・・
日本政府(入管当局)が彼を難民認定したことは、誠に正しい判断だったと思います。とはいえ、観光関係の仕事をしていた彼はコロナ禍で大きな打撃を受けました。ようやく立ち直ろうとしています。彼は若いし、行動力があるし、日本語も完璧に近いので、いずれ安定的な基盤を日本社会に築くことができると思いますが、そのためにはまだ多くのサポートが必要です。さらに彼は離婚した母親を日本に呼び寄せたいと考えているので、その課題の解決にも役に立ちたいと思っています。(K)